キーエンスは、どんな製品が強い?キーエンスが強い製品をまとめて紹介
今回の記事は「キーエンスが強い製品」の解説です
キーエンスは製品力や高い営業利益率で有名なFA(ファクトリーオートメーション)機器メーカーです
ビジネス雑誌で特集が組まれたりもしますが、扱う製品が一般的には馴染みのないものなので具体的な製品にまで掘り下げて書かれることがあまりありません
今回はキーエンスと同じFA機器の業界で営業に関わってきた筆者が「キーエンスの製品の強み」について説明していきます
製品ごとに競合メーカーもあげながら解説していきます
前提:全製品が強いわけではない。
今回の記事では次のどちらかに当てはまる製品を紹介します
- トップクラスのシェアを築いている製品群
- 業界トップではないが注力している製品群
「トップクラスのシェアを築いている製品群」は体感的にはキーエンスが国内シェア1位だと思う製品です
※シェアの根拠になるようなデータがないので一応「トップクラス」と表記します
流石のキーエンスでも「全製品が業界トップ」ということはありません
ただし、他社よりもシェアの低い製品でも「注力をしていて強みのある製品」と「そもそも注力すらしていない製品」に分けることは出来ます
今回の記事では、トップシェアではなくてもキーエンスが注力していて十分な強みのある製品についても解説していきます
競合他社を圧倒するほど強い製品
キーエンスが他社を大きく引き離して圧倒している製品について紹介します
ここで紹介する製品は次の2つです
- 画像判別センサIVシリーズ
- クランプオン流量計:FDシリーズ
営業的には他社の製品で戦いを挑むことがかなりきついと感じる製品です
客先指定と価格以外の要素で採用を取ることはかなり厳しいのではないでしょうか
ひとつずつ説明します
画像判別センサIVシリーズ
製品ページURL:画像センサ
強さのポイント:設定のわかりやすさ、運用のしやすさ
IVシリーズは製造業の現場でよく見かける画像判別センサで、その最大の武器が「圧倒的な使いやすさ」です
カメラで撮影した画像を使って検査や部品のあるなしを判別する製品は大きく分けて2つあります
ひとつめがIVシリーズのような「そこそこ仕様と機能で人がやるには簡単な作業を自動化する」ために多く使われる画像センサです
もうひとつは「人が見分けるのも難しい作業を自動化する」ために使われる高精度・高機能・高額の画像処理機器です
キーエンスで言うところのCVシリーズ・XGシリーズクラスの製品ですが詳細は後述します
IVシリーズのような比較的簡易な検査を行う画像センサは従来からありましたが、そのほとんどは慣れている人でなければ初期設定すら難しいものがほとんどでした
IVシリーズを使いたい顧客は高度な検査を行いません
それなのに、立ち上げまでたどり着くための設定が難解で不親切という機器が多かったのです
検査したい対象箇所にピントを合わせ、検査領域を指定して、その中で検査に必要な画像を作るための前処理設定をして、ようやく検査の設定を行なっていくような設定になることが一般的でした
どれもメーカー各社が別々の用語を使い、メニューからいくつも潜ったところにある項目をひとつひとつ設定して立ち上げるようなもので初見で使うにはハードルが高いものだったのです
現在の製品では他社も機器の操作性には配慮していると思いますが、その中でもキーエンスのIVシリーズは頭ひとつ飛び抜けて使いやすい製品となっています
他社は「マニュアルを見ながら、何度も問い合わせをして1時間かけて設定する」とすれば、キーエンスは「ガイダンス通りに進めば、十数分で立ち上がる」くらいの差があります
画像センサは画像処理の中では簡単な機器ですが、工場の中では作業者を1人、2人と削減できる製品なので非常に導入効果の高い製品でもあります
また、他の原理のセンサでは安定せずに、画像センサによって視覚的に判別させなければならない場合も多くあります
「『他社と同じ金額帯の中でやや高い』くらいの価格であれば、設定・立ち上げがしやすいIVを選ぶ」という顧客もいます
導入検討から専任営業マンが即座にフォローしてくれるキーエンスの営業手法と合わされば顧客にとってのIVシリーズの価値は更に高いものになるでしょう
営業現場では他社が案件に気づいた頃には実機テストまで完了していて採用が決まってしまうことも多い製品です
競合製品の例
クランプオン流量センサ:FDシリーズ
製品ページURL:流量センサ/流量計
強さのポイント:取り付けの簡単さ、扱いやすさ
キーエンスは流量計メーカーとしては後発も後発、というメーカーです
そんな中でリリースした直後から爆発的にシェアを拡大した製品がクランプオン流量計のFDシリーズです
その最大の特徴は「配管を切らずに取り付けができる」という点です
従来の流量計は配管の内側を使う計測原理の製品が多く、配管を切って機器を取り付けなければ使えない製品でした
配管を切断して流量計を配管に挟み込んでから配管内の液体が漏れないように施工しなければならないので設置・交換に非常に手間がかかるのです
実際に配管を流れる液体に触れなければならないので、センサを侵食するような液体では使うことも出来ませんでした
しかし、キーエンスのFDシリーズは配管の外側から取り付ける流量センサです
取り付けるために配管を切る必要もなければ、配管を流れる液体の影響で壊れる心配もありません
この手軽さが大いにウケて一気に採用を広げていきました
また、特に素晴らしかったところが着眼点です
「気軽に使える流量センサ」という業界の中で抜け落ちていた領域を狙い撃ちしたのがFDシリーズです
流量計には大きく分けると2つの用途があります
ひとつ目はプラント設備の流量を絶えず、長期間計測続けるような用途です
こちらは横河電機やアズビルのような比較的本格的な流量計が使われる用途です
そして、もうひとつの用途がキーエンスのFDシリーズが使われている「製造装置内でおおよその流量がわかればOK」という用途です
従来の流量計市場では「製造装置の中の細い配管に気軽に付けられる取り付け方法が出来る安価な製品」があまりありませんでした
製造装置の中には水や各種薬液など様々な種類の液体を使うものが多くあります
そして、それらの液体は精密ではなくてもある程度の精度で計測し管理・制御する必要があります
しかし、あくまでも製造装置の中の用途なので取り付けスペースが限られる上に、一ヶ所あたり数十万円という本格的な流量計を取り付けることは出来ません
そんな中で比較的安価に買えて、気軽に設置できて、用途から考えると十分過ぎる精度で計測が出来るFDシリーズは「気軽な流量センサ」というポジションを一気に確立しました
実はキーエンスのFDシリーズ以前から他社でもパイプクランプ型の流量計はありました
しかし、それらはプラント配管用の一時的な検査のための大型で高額な製品だったのでFDシリーズのように、製造装置内に気軽に複数台取り付けられるような製品ではありませんでした
キーエンスは流量計では後発メーカーですが、流量計をキーエンスが得意な汎用センサの領域に引きずり込んで成功させた製品がFDシリーズだと言えるでしょう
競合製品の例
富士電機:FSZ
2022年後半まではなかなか競合と言える製品がありませんでしたが富士電機が同種の製品をリリースしました
これまで「キーエンスのパイプクランプみたいなやつない?」と聞かれてきた専門商社の営業マンは紹介してみてもいいかもしれません
高いシェアを持っていて非常に強い製品
ここで紹介する製品は「市場で見かける製品がほとんどキーエンス。しかし、他メーカーでも提案のしようがある製品」です
実際にはキーエンスのシェアが非常に高いのですが、他メーカーを指摘して採用している顧客もあります
そして、営業側としても同じような他メーカー製品でも用途で比較的戦える製品です
画像センサ・画像処理システム:CVシリーズ/XG シリーズ
先程紹介した画像判別センサのIVシリーズよりも更に高い機能や性能が求められる用途で活躍する画像機器です
IVシリーズよりも複雑な項目での検査、あるいは高速で処理しないと見たいものを撮り逃すような高速撮像で使われます
当然、難しい内容を処理し切れるだけの高い処理能力を持った機器ではあるのですが、1番の強みは売り手の技量だと思います
というのも、CXシリーズ・XGシリーズで対応するような内容の検査や判別だと、それなりの知見と技量がないと扱えなくなってくるからです
CXシリーズ、XGシリーズは別売の部品を組み合わせて使います
カメラ、コントローラ、レンズ、照明、接写リング、光学フィルターなどの部品を用途によって選び分けなければなりません
更に最適な選定をした上で、最適な処理を選択して設定していく必要もあります
特にCXシリーズやXGシリーズで対応するような使い方には一筋縄ではいかないものも多くなってくるので、機器の選定、設置位置の関係、設定の選択に知見が必要になってきます
これは他社の同じクラスの画像機器でも同じことです
高性能で自由度が高い分、最適な調整を導き出すことが難しくなるからこそ、専門の担当者に頼れることの価値が大きくなります
他メーカーであれば、営業現場で手取り足取り画像処理に対応できるような営業担当はかなり限られます
一方でキーエンスは画像処理製品の専任営業マンが自ら営業をしているので顧客からの疑問への回答も、使い方のレクチャも即座に行うことが出来ます
実際に営業現場でキーエンスを見てきた立場としては、製品の機能よりもこの対応力の差が他社とのシェアを大きく分けているように感じます
他社ではデモ・実機テストの段取りを進めている間にキーエンスは実機テストをした上で見積、決裁権者へのコンタクトも済ませていることもよくあります
そうなると他社はキーエンスの製品を買う稟議書を通すための相見積のためにせっせと働くことになります
CXシリーズ・XGシリーズが強い理由は営業の対応力と連携して顧客の課題を書行けるするために十分な能力を持っていること、と言い換えてももよいかもしれません
競合の例
オムロン、コグネックス、パナソニック
中小の画像処理専業メーカーも割といる分野ですが、汎用的なものだとオムロンのFHシリーズが比較しやすいかもしれません
レーザーセンサ:LR-Z
製品ページURL:LR-Zシリーズ
強さのポイント:手軽に・確実にワークの有無を検知出来る
レーザーセンサのLR-Zは対象物のあるなしをレーザー光の反射によって検知するセンサです
レーザー光の反射によって有無を検出するセンサには
- 反射によってセンサに返ってきた光の強弱の差を使って対象物の有無を検出するセンサ
- 反射によってセンサから対象物の距離を測定して対象物の有無を検出するセンサ
があります
LR-Zは後者の距離によって対象物の有無を検知するセンサです
LR-Zの強いところは「とりあえず迷ったらこれを付けておけばいい」と顧客から評価される検出能力の高さです
センサで検出する対象物をワークと言いますが、生産工程ではワークのあるなしを判別する用途は山のようにあります
- ワークが正しくセットされているかの確認
- ワークがきちんと供給されているかの確認
- 設備を連携させるタイミングを取るためのトリガー
- ツールが破損していないかの確認
どれもワークの有無を判別出来れば良いのですが、確実にワークの有無を確実にを見分けるというのは意外と難しいことだったりします
ワークから反射する光を使ってありなしを判別しているので、光がうまく返ってこないようなワークではセンサが上手く動作しないからです
しかし、ワークを上手く検出出来なければ設備の誤動作や加工のミスが起きてしまう可能性が出てきます
結果として不良品を作ってしまったり、設備を痛めてしまうことにも繋がるので有無を正確に判別できることは顧客にとっては大きな価値になります
実際の生産現場では次のようなワークが難検出ワークとされます
- 正反射が強くなる光沢のあるワーク
- 表面がセンサとは別の方向に光を反射してしまうような形状のワーク
- 光を吸収してしまいセンサまで十分な光が返ってこないワーク
- 光が反射せずにそのまま突き抜けてしまう透明体ワーク
当然、LR-Zでも検出できないワークはありますが、それでもワークの有無の判別用で使われるセンサの中では他メーカーの製品を含めても高い検出能力を持っているセンサです
更に次のようなLR-Zの特徴も有無検出での使いやすさを後押ししています
- 有無検出センサで一般的な25.4mmの取付ピッチ
- おおよその検出状況が掴めるセンサ背面のデジタル表示
- 誰でも同じ調整ができるボタンティーチング
- 悪環境や衝撃に強い金属ボディ
正直なところLR-Zよりも細かいワークや薄いワークの検知が出来るセンサもありますが「どんなワークでも誰が使ってもおおよそ対応できる」という点ではLR-Zに強みがあるかと思います
競合製品の例
レーザーセンサには他にも光量式のセンサやTOF方式のセンサもありますが、検出原理が違うのでここでは取り上げません
ファイバセンサ:FS-N、FS-N40
製品ページURL:FS-Nシリーズ / FS-N40シリーズ
強さのポイント:性能と提案力
ファイバセンサはアンプとファイバユニットを組み合わせて使うセンサで、主にワークの有無検知で使われるセンサです
アンプ部分には設定・調整のためのボタンとデジタル表示が付いていて、中には検出に使うLEDと受光センサが内蔵されています
光を通す材料で出来ているファイバユニットをLEDと受光センサにつながる穴に差し込むことでアンプ部分から離れたところにあるワークの有無を光の強さによって判別します
2023年4月段階ではFS-N40が最新機種ですが、それ以前のモデルのFS-Nの時代から非常にシェアの高い製品でした
高いシェアの理由は製品の能力と営業の提案力の掛け合わせによって作られたものだと思います
ファイバセンサは以前なら「センサ業界の花形」とまで言われた製品です
ファイバセンサは有無検出に使われますが、適切な選定と調整を行うには知見が必要な製品でもあります
ファイバユニットは数十種類を超えていて、やりたい内容とセンサを設置出来る場所の制約に合わせて使い分けなければなりません
更にファイバユニットの使い分けだけで対応出来なければ、ワークとの位置関係を変えたり、タイマー機能を使ったり、センサの感度や光量まで調整する必要も出てきます
機器の操作自体は簡単ですが、機器の選定、設置の調整、設定の選択の組み合わせが自由に出来る分、知識と経験がなければ使いこなすことが難しい製品だと言えます
そして、顧客がファイバセンサの選定をする時もメーカーに問い合わせしながら決めることも多く、営業担当の対応力が採用につながりやすい製品です
この点でキーエンスはセンサ専任の営業マンが問い合わせに迅速に対応して、実機デモ・実際のワークでの検出テストを即座に行うことが出来ます
ファイバセンサはそこまで金額の高い製品でもないので、問題なく使えることがわかればすぐに採用が決まることも非常に多くあります
ファイバセンサは「最適解を選べない顧客の困りごと」と「専任営業による提案力の強み」が上手く噛み合っている製品だと言えるのではないでしょうか
競合製品の例
オムロン:E3NX-FAシリーズ
パナソニック:FX-500シリーズ
国内メーカーのファイバセンサを性能で見るとキーエンス、オムロン、パナソニックの3社が頭ひとつ抜けている印象です
実際、使い勝手に関わる機能の違いはあるものの「キーエンスでなければ出来ない」という程の差はないのではないでしょうか
だからこそ、営業のレベルや販売体制の違いによって差が出ているのかもしれません
ちなみにオムロンとキーエンスは新機種を出すたびに
キーエンス:MEGA
↓
オムロン:GIGA
↓
キーエンス:TERA
と相手の検出モードよりも上の名前になるようにしていたりします
ガイドバルス式レベルセンサ:FLシリーズ
製品ページURL:FLシリーズ
強さのポイント:後検知のしたらさ、業界の隙間
ガイドパルス式レベルセンサは液体のレベル(液面の位置)を検出するセンサです
例えばタンクの中にどのくらいの液体が入っているのかを確認するような使い方をします
製造現場では多くの場所で液体を使います
- 製品を洗浄するための薬液
- 金属を削る機械の中で摩擦を減らしたり、熱を取り除くために使うクーラント液
- 食品や飲料の材料
- 役目を果たした後の廃液
そのような場所ではタンクにどのくらいの液体が入っているのかを確認する必要があり液面の検出は工場内の至る所で行われています
レベル計が液面を誤検知すると本来供給されなけれならない冷却水が供給されなかったり、適量の薬液を使わなければならない工程に必要な量の薬液が届かないなど製品の品質低下や設備の故障につながります
タンク内で液面を確実に捉えることはものづくりの現場では重要なポイントになります
ガイドパルスレベル計のFLシリーズは従来の方式の課題になっていた誤検知要因を克服する製品として売り出されました
顧客の課題を拾い上げて製品にした製品開発力は見事なのですが、同業としてそれ以上に素晴らしかったのが「積極的に課題解決営業をかけるメーカーがいない製品」に入り込んだ立ち回り方です
流量計と同じく、キーエンスはレベル計のメーカーとしてはかなりの後発メーカーです
従来のレベル計の業界ではキーエンスのような総合制御機器メーカーが解決提案を引っ提げてコンタクトしてくる、ということはあまりなかったのではないでしょうか
レベル計を扱うメーカーはどちらかというと液体周りの機器に特化したメーカーが多く、生産設備のメーカーはレベル計を個別に探すような状態になりやすかったのではないかと思います
頻繁に設備メーカーに出入りするPLCや光電センサのような制御機器が得意なメーカーと商社にとっては苦手分野になるので、積極的な営業活動は出来ません
そんな「多くの設備で使う」「従来から課題がある」「メーカーも商社も頻繁に営業してこない」という条件が揃った隙間だったからこそ後発のキーエンスが一気に採用を伸ばしたように感じます
競合の例
ノーケンがガイドパルスの製品をやっています
組み込み用途ではガイドパルスで競合するよりも、他の計測原理のレベル計と競合することの方が多い気がします
接触変位センサ:GT2シリーズ
製品ページURL:GT2シリーズ
強さのポイント:耐環境性、扱える営業マンの数
接触範囲センサは計測したい対象物に測定子を押し当てることで高精度にワークの厚みを計測するセンサです
ワークの厚みを測るセンサには大きく分けると接触式と非接触式の2つがあります
接触式のセンサはGTシリーズのように実際にワークに触って測定するセンサで非接触式のセンサはレーザー光などを使ってワークに触らずに厚みを計測するセンサです
一般的には、より高い精度で厚みを計測したい用途で接触式の変位センサを使います
顧客の生産設備を見るとかなりの割合でキーエンスのGT2シリーズがついています
ただ、この製品については製品力よりも営業マンの力量差が大きいように感じます
代表的な競合はオムロンのZX-TやパナソニックのHG-Sあたりになるでしょう
オムロンに至っては廉価モデルのE9NC-Tまで持っていて用途と価格帯で使い分けが出来ます
ただ、そもそも使い分け以前の問題でキーエンス以外では接触式の変位センサを顧客の課題解決レベルで扱える営業マンなんてほとんど見かけないので勝負の土俵にも上がれていない気もします
まず、センサの中では操作や設定が難しい部類の変位センサに詳しくて自力で扱える営業マン自体が業界でみたらひと握りです
そもそも接触式の変位センサをまともに知らないセンサ営業マンも少なくはないでしょう
GT2シリーズについては競合が課題解決レベルの提案をなかなか出来ず、提案出来たとしても実機デモやテスティングまでは辿り付けません
結果、ひとりで提案を完結出来るキーエンスの専任営業ばかりが提案機会を得ている製品だと思います
競合製品の例
筆者の営業不足の可能性もあるのですが、現場で見かける接触変位センサの多くがキーエンスです
たまにオムロン・パナソニックも見かける、くらいの割合です
エリアセンサ
製品ページURL:エリアセンサ
セーフティライトカーテンとも呼ばれる製品で、バー上に並んだ光電センサによって人の手や指の侵入を検知するための製品です
主に人がエリア内に侵入した状態で動かすと危険な場所に設置して、設備の稼働を制限するために使います
現在は10件中6-7件くらいはキーエンスが採用されているくらいの採用率ではないでしょうか
セーフティライトカーテンのような安全機器はただ使えば良い、というものではありません
きちんと設備の全体構成で安全レベルを担保しなければなりません
私はあまり首を突っ込まないようにしていたので、軽く触れる程度にしておきます
競合の例
パナソニックインダストリー、オムロン、IDEC、竹中電子工業
竹中はセーフティライトカーテン以外の一般用途でのエリアセンサで採用されているところを見かけるメーカーです
番外編:おそらく強い製品
正直に言うと、筆者の専門外なので詳しい事情がわからない製品です
ただし、キーエンスの動き方や採用状況を見る限りキーエンスが強いと思われる製品です
3Dプリンタ:アジリスタ
製品ページURL:アジリスタ
強さのポイント:使いやすさ、フォローしてもらいやすい国産メーカー
3Dプリンタといっても幅が広く、一台数万円のものから数億円するものまで様々です
キーエンスのアジリスタは数百万円程度の価格帯で、工業製品の試作や形状サンプルを作るためには十分な程度の精度で整形出来る製品です
3Dプリンタは顧客にとって導入メリットがわかりやすい製品です
製品開発の課題であった試作品や形状サンプルを作る時間とコストを大幅に削減出来るからです
従来ならば、設計構想、図面作成、外注との打ち合わせを終えて発注をしてから製作開始となるので、試作品が出来るまでには時間もコストもかかることが普通でした
3Dプリンタであれば、作りたいもののデータさえ作ってしまえば数日中には試作品が出来上がります
しかも、設計を変更・修正するにも3Dプリンタで出力するデータを変更すれば良いだけなので、非常に小回りが効きます
そんな顧客にとって導入する価値の高い3Dプリンタですがキーエンスがアジリスタをリリースするでは国内にちょうどいいメーカーがあまりありせんでした
部品がしっかり嵌合するような、試作に使える精度を持つ3Dプリンタは海外製のものが多く、国内では十分なサポートが得づらかったのです
更に専門的な営業マンも少なく、しっかりと提案してもらうことも難しいという状況だったと思います
そんな中で展示会でも大々的に売り出し、気になれば営業が即座に提案に来るキーエンスが3Dプリンタをリリースしたのはかなりインパクトがあったのではないでしょうか
実際にアジリスタが出た当時は多くの顧客でアジリスタを使って出力したテストサンプルを見かけました
ここでも「顧客にとっては価値が大きい」
しかし、「他社の製品では検討が進められないくらいにとっつきづらく、結局実現できていない」という領域をしっかりとものにする、というキーエンスにはよくある成功パターンが感じられます
競合の例
マイクロスコープ
製品URL:マイクロスコープ
強さのポイント:接触力と実物テスト
マイクロスコープはレンズとカメラによって対象物を拡大観察するための製品です
用途によっての使い分けになりますが十万円前後から数百万円超えの製品まで存在する製品です
キーエンスはある程度精細な検査や分析で使える数百万円クラスのマイクロスコープを取り扱っています
イメージとしては、不良品の発生原因を特定したり、破壊検査の結果分析に使うような製品です
文字通り拡大して観察するための機器で、観察した結果は報告書にまとめることが非常に多くなります
キーエンスのマイクロスコープは制御で培った画像処理の技術で高精度な拡大画像を作れることと、他の検査製品とある程度共通した使い勝手の良さを強みにしています
ただ、製品自体の性能よりもシェア拡大の要因になっているのはやはり営業力の差です
マイクロスコープでキーエンスの競合になるメーカーではハイロックスやオリンパスがいますが、どちらも観察機器のメーカーなのでものづくりの顧客と日常的に接点を持ちづらい会社です
顧客に頻繁に出入りする制御系の商社に担いでもらうとしても、商社の営業マンにとっても専門外の製品なのでカタログをばら撒くことは出来ても、有効な提案をすることは非常に厳しい製品でしょう
かと言って、マイクロスコープ自体は増設も更新も数年に一度行うかどうかの機器なので、マイクロスコープでしか接点のないメーカーから頻繁に顧客に連絡出来るような製品でもありません
そんな中で製造部や生産技術部に日常的に出入り出来る総合制御機器メーカーのキーエンスが持つ情報のアドバンテージは非常に大きいのではないでしょうか
キーエンは単独でも実機デモ・現物サンプルでのテスティングも出来るので、競合他社から知らない間に顧客を納得させて採用されているケースがかなり多くあります
競合の例
キーエンスの競合はレンズ発祥のメーカーであることが多い製品です
マイクロスコープでは「より精細に拡大観察する」ことが求められます
レンズメーカーはレンズ技術の高さで「ありのままに映し出す」ようにアプローチします
一方でキーエンスは制御で培った画像処理技術で「精細な画像を作ること」からアプローチしています
一見同じように見える画像でもアプローチが違えば、細部のニュアンスは違ってきます
そのあたりでメーカーを選び分けする顧客もいます
また、キーエンスはレンズメーカーの競合には出来ないような高速カメラや元素分析といった付帯機能で提案をしてくることもあります
三次元測定機/投影機
どちらも対象物の寸法を測定するための製品です
部品メーカーが作った製品の寸法を担保するために使う製品です
寸法測定機については完全に専門外なので、一応触れるだけにしておきます
競合の例
首位ではないが年々強くなっている製品
シェアで見るとキーエンスの上を行くメーカーがいるものの、年々キーエンスが力をつけている製品を紹介します
PLC
製品ページURL:PLC
強さのポイント:仕様、機能、営業のサポート力
PLCは製造設備に狙った動きをさせるためのコントローラです
“Programmabl Logic Controller” を略してPLCと呼ばれています
工場の設備はPLCのプログラムに従って動いているものが非常に多くあります
業界トップは三菱電機です
今でもPLCのことを三菱の製品名であるシーケンサと呼ぶことが多いくらいにキーエンスにとっては強い競合です
以前は三菱電機、オムロン、キーエンスの順と言われていましたが、2022年現在ではオムロンを追い抜いて三菱電機、キーエンス、オムロンの順になっているでしょう
キーエンスとしては珍しく「チャレンジャー」を自称する製品ですが、キーエンスのやり方が活かしやすい製品でもあります
メーカーによってプラグラムを組む時の勝手が違ったり、設定用のPCソフトウェアも違うので他社切り替えが難しい製品ですが、持ち前の「顧客に付加価値のある他社にない製品を開発する」製品力と「専任営業マンによる効果的なサポート体制」によって徐々にシェアを広げてきました
他メーカー採用のPLCを切り替えることは、身の周りで例えるのであればWindowsユーザーにAppleのMACを使わせる感覚に近いかもしれません
使い勝手も違うので、基本的には慣れ優先で扱えるメーカーのPLCが選ばれます
だから、何かしらの理由が無ければ置き換えることは難しいのです
キーエンスの場合は仕様や機能で「キーエンスを使う理由」を作ったうえで、PLCの専任担当によって顧客がキーエンスのを扱えるまでサポートするようなやり方をとってきました
以前の営業スタイルでは装置を製作する装置メーカーに営業がサンプルプログラムを提供したりしながら熱心にフォローしているところも見かけました
最近はトラブルのあったタイミングで制御上はどんなことがあったのかを辿ることが出来るドライブレコーダーの機能と多種多様な機器と通信プログラムレスで接続出来るKV-8000を軸に採用拡大を図っています
昨今の半導体不足で三菱電機、オムロンの製品が長納期になってからもしばらくは即納体制を維持していました
その後、即納体制は崩れましたが、他メーカーに比べるとかなりマシなので納期を理由に競合からの切り替えが一気に進んでいます
主な競合
他にもPLCをラインナップしているメーカーはありますが、国内の汎用的な用途であれば三菱電機、キーエンス、オムロンの3社がほとんどのシェアを持っているような状態です
強い製品から見えてくるキーエンスの勝ちパターン
今回の記事はキーエンスが強みを持つ製品を紹介しました
キーエンスが強い製品を見ていて感じる勝ちパターンが見えてきます
- 大前提として顧客にもたらす価値が大きな製品を出す
- その製品の価値が顧客に理解されるような営業をする
- 早く、多く活動して競合が気づく前に決め切る
- 実機デモ、テストを有効に使う
- 総合制御機器メーカーならではの情報力を活かす
キーエンスの強さはとにかく「顧客のところで顧客にとっての価値を実現し切ること」ではないでしょうか
どんなに素晴らしい技術も製品にならなければ顧客には届きません
どんなに素晴らしい製品でも顧客に理解されなければ採用には結びつきません
キーエンスのやり方は「価値のある製品を、その価値を上手く伝えられる営業マンに、より顧客に伝わりやすい方法で伝える」ことに特化したやり方です
そして、他者に対してはビジネスの基本と言われる「競合他社が弱く、自社の強みが生きる分野で勝負をする」を徹底しているように見えます
その結果が、他者を圧倒する企業力につながっているのではないでしょうか